【日本画とは?定義と実状、有名画家】芸大で日本画を学んだイラストレーターがご紹介

日本画とは?

日本画って何?

と思う方は多いのではないでしょうか?
筆者は芸大で日本画を学んだので、よく聞かれて
こう答えます。

筆者 まふね
筆者 まふね

岩絵具っていう伝統的な画材とかで、和紙や布に描いた絵だよ

すると

ふーん…(←どんな絵か想像できてないお顔)

となる事がすごく多いです。

この記事では
日本画とは何なのか?定義と実状、そして
知っておきたい有名画家の絵を、ご紹介しますね。

読んでくださるあなたが、日本画のことをよくわかり
好きになってくれますように😊

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結論:日本画の定義、岩絵具などで和紙や絹の布に描いた絵

辞書で「日本画」と引くと、こう出ます

古代以来、中国・朝鮮からの影響を受けながら日本で発達した、独自の様式を有する絵画。絹や紙に毛筆で描き、主として岩絵の具(顔料)を用いる。西洋画(洋画)に対していう。
デジタル大辞泉(小学館)より

分解すると3つの要素があります。

1、古くから日本で発達した絵
2、絹や紙に筆で描き、岩絵具いわえのぐ顔料がんりょうというものを使う
3、西洋画の対義語

筆者が日本画を描いたり調べた中で、一番しっくりくる説明は、2番です。

岩絵具などの伝統的な画材で、和紙や絹の布に描いた絵
これが現在、日本画の定義といっていいでしょう。

和紙や絹の布はわかるけど
岩絵具いわえのぐってなあに?

岩絵具というのは、鉱物を砕いた絵の具(正確には顔料がんりょうという)のことです。

上のような天然ものだけでなく、人口の顔料もたくさんあります。
そのままではさらさらの粉なので、にかわ(動物の骨などから煮出した接着剤)と混ぜて使います。
岩絵具以外では、墨や金箔・胡粉ごふん(貝殻の粉末)などもよく使われますね。

では岩絵の具で描く日本画とは、どのような絵なのでしょうか?

知っておきたい!有名な日本画家

日本画として有名なのものをいくつかご紹介しますね。
教科書に出てくる絵もありますので、知ってる方もいらっしゃるでしょうか?

狩野芳崖

狩野芳崖かのうほうがい悲母観音ひぼかんのん

横山大観

横山大観よこやまたいかん「夜桜」

竹内栖鳳

竹内栖鳳たけうちせいほう 班猫はんみょう

上村 松園

上村 松園 うえむら しょうえん 「序の舞

安田靫彦

安田靫彦やすだゆきひこ「卑弥呼」(左の絵です)

平山郁夫

平山郁夫ひらやまいくお「パルミラ遺跡を行く」

東山魁夷

東山魁夷ひがしやまかいい「道」

このあたりが教科書にも載っている有名な日本画家の作品です。
どれもとても美しいですよね。

さてここで、よく聞かれる質問です。

あれ?
浮世絵とか水墨画とかは、日本画じゃないの?

浮世絵は日本画?

結論、浮世絵は広い意味では日本画です。
広い意味と狭い意味のお話をしますね。

広い意味での日本画

「日本画」という言葉は、明治時代にできました。

西洋から入ってきた西洋画に対し、それまで
大和絵・水墨画・仏画・文人画・襖絵・浮世絵…などなど
さまざまに呼ばれていたものを一くくりに「日本画」としたわけです。

浮世絵、水墨画、屏風絵・襖絵、仏画…
古くから日本で発展したすべての絵は、日本画といえます。

水墨画も

浮世絵も


み〜んな日本画!

こちらの本で、広い意味での日本画(つまり日本絵画)の有名な作品がよくわかりますよ。

狭い意味での日本画

江戸時代までは、絵師は職業で絵は商品や実用品でした。

襖絵、仏画、浮世絵、掛軸の絵…それぞれ使い道がありますよね。

それが明治時代になると「Art」という概念が輸入されました。
日本人はこれを「芸術」と訳します。

江戸時代までの、生活と直結する絵ではなく
美術団体や、美術展覧会で競い合い
「良い絵を描く」ことをめざす芸術の文化ができてゆくのです。

この動きがさかんになった、明治時代以降の日本画が
狭い意味での「日本画」です。

どういう絵かと言いますと

さきほど知っておきたい!有名な日本画家でご紹介したような絵です。

まとめると

・広義 → 古くから日本で発展したすべての絵
・狭義 → 明治以降、日本の伝統的な画材で描いた絵

となりますね。

実情…筆者が思う「3つの日本画」

さてここからは

現実は、もうちょっと複雑〜

という話。
筆者は現在の日本画を、3つに分類しています。

1、岩絵具などで和紙や布に描いた絵
2、日本画の会派の展覧会に出されている絵
3、画家さんが「日本画」と自称した絵

一つずつご説明しますね。

1、岩絵具などで和紙や絹の布に描いた絵

これは今までにたくさんご説明した「広い意味」の日本画。
古代〜現在まで、伝統的な画材で描いた全ての絵は日本画です。

2、日本画の展覧会に出されている絵

ここで言いたい結論は
日本画以外の画材(油絵の具など)で描いても
日本画の展覧会に出ていれば日本画

という事です。

世の中には絵のコンクールってたくさんありますよね。
身近なところで言うと「○○市 こども絵画コンテスト」みたいな。

日本画にも様々なコンクールがあります。そこで賞を取れば
たとえ絵の一部を油絵の具で塗っていても
受賞した絵は日本画ですよね。

というのが広くわかりやすい説明ですが

筆者の体験から、ちょっとディープな美術界のお話を…ぐひひ

日本には「美術団体」というものがあります。公募団体とも呼ばれます。

芸能人が「二科展」に入選した!
なんてニュースがよくありますね。
あれは美術団体「二科会」の展覧会「二科展」に絵を応募して
審査に通り、展示されたということです。

ちょっと脇道、美術とマネーの話。

美術団体の公募展に入選するには
団体に所属して年会費を支払い
定期的な審査に応募するのが、一般的なようです。その際出品料も支払います。

え、お金払って応募するの?!

ね!そうやって美術業界は支えられているんだね。
若い人や受賞常連者は安くなるとか、いろいろなケースがあるみたいだよ

話をもとに戻すと
この美術団体の応募枠
絵画、彫刻、工芸、書などさまざまあって
日本画と指定されている枠があります。
また美術団体自体が、日本画のみ対象としている場合もあります。

ちなみに筆者が学生時代、よく知っていた日本画の公募展は以下3つです。
教授は皆さんいずれかに所属しておられました。

・「公益財団法人 日本」美術院の「院展」
・「公益社団法人 日展」の「日展」
・「一般社団法人 創画会」に「創画展」

このような展覧会で日本画として当選し、展示されれば
当然それは日本画ですよね。

でも、美術団体によっては
日本画以外の画材をふんだんに使う絵も、入選します。

例として、筆者の学生時代の教授の絵

この小嶋先生は、日本画の画材のみならず
油絵を描くためのキャンバスに
テンペラ(卵と顔料を混ぜたも絵の具)とかでガンガン色を重ねて
ガリガリ削ったりもするっていう…

従来の日本画からは考えられない描き方をしておられました。

画材も技法も、全然日本画のものじゃない。でも
日本画の教授の中で、一番影響力のある先生だったのです。

それに、上記引用の絵が日本画っていわれても
イメージと違ってびっくりする方も多いのではないでしょうか?
枠にとらわれず、自由な創造ができる美術団体だと
いろいろアリなんですね。

ちなみに小嶋先生の教育方針に則り、筆者が描いた一枚がこちら…(はずかし!)

筆者が描いた日本がの写真

先生、大変お世話になりました。お亡くなりになったときは悲しかったです…。

筆者が学生だったのは2000年代前半と昔の話ですが
執筆現在(2021年)も日本画を描く友人の話を聞くと
業界の動向はあまり変わりないようです。

というわけで
日本画の展覧会に出されていれば日本画、というお話でした。

3、画家さんが「日本画」と自称した絵

これはもう・・・
一見身もフタもないんですが。笑

筆者の恩師小嶋先生は、キャンバスにテンペラで描いても
日本画!と自称されていたわですから、それはもう日本画なわけです。

で、逆も言えるというか

筆者の大学の先輩で日本画の公募展にガンガン応募してよく当選するような
すごく絵の上手な方がいて

先輩は卒業しても、日本画をずっと続けるんですか?

と聞いた事があります。そしたら返ってきた返事が

自分の絵を日本画だと思って描いたことはない。
オレはただ、絵を描き続ける。それだけだ。

先輩、かっこいいけどちょっとめんどくさいです。
(すごく良いな方でしたよ!)

要は、岩絵具で絵を描いて、日本画の公募展に展示されても
本人が日本画と思わなければ
それは日本画じゃないんですね。

というわけで
画家さんが「日本画」と称したらそれは日本画です。きっと

注目!新境地を開拓する日本画家さん

最後に、現在すばらしい・おもしろい絵で
日本画の新境地をひらく画家さんたちをご紹介しますね。(筆者の独断と偏見によります〜)

千住博せんじゅひろしさん
代表作は「ウォーターフォール」シリーズ。国際美術賞を受賞したり、日本のお寺の襖絵になったり!


中原亜梨沙なかはらありささん
おしゃれポップでカワイイ😍化粧品の広告に使われることも!


谷保玲奈たにほれいなさん
エネルギッシュ!ドミニカ共和国やボリビアでお育ちになったそうで、既存の日本画にはない発想が生まれるのかも?!


木村了子きむらりょうこさん
イケメン仏画、新しい!美しい男性像を描き続ける事で、美人画が多く描かれてきた日本画壇に一石を投じてらっしゃいます。

どうです?
伝統的な画材・技法を使いながら
なんとゆたかな世界なんでしょう!

日本画のこと、何となくおわかり頂けたでしょうか?そして

ちょっと好きになってきませんか?ウフ

最後に…
偉そうな事をたくさん書いて、ご不快に思われた方がいらしたら申し訳ございません。
筆者は一応、日本美術史の著作があるほど美術を愛しています。どうぞご容赦ください。

『美どらま 日本美術史ナナメ読み』

日本画に親しみをもっていただけたら嬉しいです😊

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この記事を書いた人
真船きょうこ

イラストレーター・漫画家/仏像描いて10余年 ▶︎京都で日本画や仏像史を学ぶ→デザイナ→漫画家 ▶︎著書に『仏像に恋して』『彼と彼女のヒストリごはん』など ▶︎静岡生まれの関東在住、絵画講師、一児の母。詳しくはこちら

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